《時空を超えて》の制作変遷

去年の今頃、卒制に頑張っていたなと思い、アフリカシリーズを何故描くか、という疑問にお答えするためにここに副論を記します。

「《時空を超えて》の制作に至る変遷」

 卒業制作のテーマはアフリカである。人類の祖と言われ、原初的なアフリカに憧れがあった。50年程前、日本の道路は舗装されていなかった。車の轍が出来て、雨が降ると水たまりが出来た。夏の暑い日には埃が舞い、土の匂いがした。ハエ取り紙があった田舎。エアコンがなく、扇風機だけだった。その記憶をアフリカに呼び覚まされ、ノスタルジーをおぼえた。又、弱肉強食で生と死が強烈に心に刻まれる。

 エジプト、チュニジア、モロッコに旅行した時に膨大な量の写真とその経験を糧にして、描こうとした。手元の資料に加え、更に詳細に動物を取材するため、天王寺動物園に行き、動物のスケッチしたり、写真を写したりした。既にアフリカをテーマにして、アフリカの風景の中の女性や、草原の中の草食動物や肉食動物を描いたことがある。その時にも、東山動物園に行き、取材をした。
 卒制のエスキースを何枚も描いている内に、ルソーのアフリカのジャングルの絵が浮かび上がった。それで画集を取り寄せた。画集を何度も眺めて自分の絵の中に取り入れようとした。しかし、ジェッツで下塗りをしたキャンバスを前にして、迷いがあったので、なかなか描けなかった。
 ようやく、ルソーの《夢》から、発想を得、作品Aを木炭でデッサンした。アフリカのジャングルの中にソファーを置き、そこに女を座らせ、その着衣は黄色にした。黄色は、元気、快活、希望を喚起させるからである。ソファーは補色の青にした。横に子ヒョウと右上に熱帯の鳥を描いた。背景のシダなどの植物を一気に描いて、女、子ヒョウ、自宅のお気に入りのソファーの模様…と描き進めた。窓外の木漏れ日が美しく、それを絵の背景の光に活かした。題名を《黄色のワンピース》とした。
 作品Bは、笛を吹いている人物、リンゴ籠を持った女など数枚、エスキースを描いたが、結局、キャンバスに向かうと全く違う絵になり、群像を描いた。ロセッテイの画集を見ていて、《最愛の人(花嫁)》の群像に引かれたからである。その集合写真のような絵から、人と人との繋がり、親密さを感じて、作品のテーマにしたいと思った。訪れた諸外国の中で、取り分けエジプトは印象深い国だった。キャンバスに四人のエジプトの女性をデッサンした。右端の女は男にした。その男はツタンカーメンの横顔のようにも見えるし、オシリス神にも見える。後方の女はエジプトの王妃ネフェルティティを模したが、女神イシスに思えて来た。オシリス神は現代風に変更した。左に女の子を加えて、背景はジャングルにした。時空を超えて、オシリス神とイシス神が現代に甦ったようだった。
 作品Aを左に、作品B《時空を超えて》を右に置くとアフリカの世界観が浮かび上がった。今まで描いて来た集大成のアフリカが描けた。

 私は大きなテーマとして、ミケランジェロの彫刻をモチーフにして作品を描いて来た。
 フィレンツェに行った時、アカデミア美術館に入り、ダビデ像のドームに行く広い廊下に四体の奴隷の彫刻が、自然光の柔らかい光を浴びながら、置いてあった。ミケランジェロの「囚われ人」だった。石の中に囚われている奴隷が、圧倒的な迫力で、迫って来て、衝撃を受けた。それまで美しものに魅かれて、花、風光明媚な風景、美しい女性や少女を描いていた。しかし、その時、この「奴隷シリーズ」をテーマに描きたいと、強く思った。荒削りの彫刻の力強さ、フォーブに続く物の持つ本来を引き出す造形に惹かれた。
 それらフォーブを思わせる彫刻の作品からアフリカの作品への移行は唐突かも知れない。しかし、私にとって平行して長年描いて来たテーマゆえに違和感はない。女性を描いて来たその延長上でアフリカの女性を描くようになったからである。フォーブのような絵具の荒々しい使い方、即興性、タッチ、色彩を自分の描き方で自由に描いた。
 私の作品作りの傾向として、先人からの引用がある。今回はルソー、ロセッテイを又、上記のようにミケランジェロを引用して来た。先人の絵から引用している作家は多々いる。例えば、あのピカソもベラスケスの《マリガリータ王女》を引用して作品を描いた。自分自身を名画に入り込ませ作品とした森村泰昌のような美術家もいる。これからも先人の引用は私の大きなテーマとなるであろう。

 卒業制作の作品についてと自分の表現の変遷を述べることに、より自分の仕事を俯瞰出来た。課題III-2のA、Bの作品ではいつも自分が描いている明るい卓上の花ではないオートマティスムで不思議な空間の心象的な暗い色を使っての花の絵が描けた。課題の50号Bでスパッタリングによる偶然に形が生み出された抽象的な絵を描くことが出来た。又、卒制では自由な発想でのびのびと絵を描けた。今年描いたこれらの絵が私の今後の作品の方向性を決めると思われる。(1985文字)

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# by natsumeakemi | 2024-03-12 13:32 | エッセイ | Trackback | Comments(0)

《アフリカの女》

《アフリカの女》
油彩、キャンバス
F50

以前描いた作品を見直しました。
Y先生に女の人が浮かんでいるのはおかしいと言われ、良く考えたら、そうかもと思い、ワンピースと手を分かるように描きました。それでも線だけで表現しましたが…F先生は、浮かんでいるのも、コラージュしているのも、良いよと言って下さったけど、一応、何でも試して見ようと思いまして。
良くなったかどうかは分からない…良くなったとおもつおきましょう♪

《アフリカの女》_e0233674_12511198.jpeg

しかし、線がなかった方が良いか?

先程直しました。線があったら、やはり
???なので。
何となくあった方がミステリアスでイイかもです。

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部分図
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# by natsumeakemi | 2024-03-12 12:44 | 油彩・人物 | Trackback | Comments(0)

《笛を吹く少女》

《笛を吹く少女》
ミクスドメディア(ジェッソ、アクリル、オイルパステル、鉛筆、木炭、透明水彩、油彩)、水彩紙
F10


京都芸術大学での卒制の作品のエスキース、何枚も描いた一枚です。ルソーの《蛇使いの女》を引用しました。
担当のY先生に、誰の作品を模写しても、夏目さんの絵になるからそのまま描いても大丈夫、と励まされたのか、腐されているのか分からないお言葉をいただきました(^^)
卒制は結局違うエスキースで描いたのですが、このエスキースで50号の絵を描こうと思い、見直しました。上から油絵で描いたのですが、水彩紙でしたので、人物だけ描き直しました。水彩紙にジェッソで下塗りしているので、油彩で描いても大丈夫でした。
このエスキースは隣りで描いていた同期にも「何を目指しているの⁈」とか、散々のコメントでしたが、見れば見るほど味があるような気がして来て、F50の油絵はどういう風になるか、楽しみです。
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去年の今頃に卒制の展覧会が開催されて、いろいろな作品描いたのですが、それ以降は小さな作品しか描いていない、と今気付きました。張り切って、F50のキャンバス何枚も購入したのに、一枚も描いていない…太平洋展のF130は完成させましたが〜後日、その作品についてはブログでアップします。

《笛を吹く少女》_e0233674_12162978.jpeg
卒制の作品、担当の部長のO先生に
この作品は「『野獣派』の作品ですよ」と言われて、
「フォビズムですか⁈」と聞いたら、
「いやいや、文字通りの『野獣派』」と言われました、、、


# by natsumeakemi | 2024-03-09 11:38 | ミクスドメディア | Trackback | Comments(0)

《富士山》

《富士山》
油彩、キャンバス
F30
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午前中、絵の前で描き足そうと、思案したけど、結局、描けませんでした〜

左下はボナール風に描きました。

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(部分図)

# by natsumeakemi | 2024-03-06 16:51 | 油彩・風景 | Trackback | Comments(0)

庭の花

ヒヤシンス、沈丁花、菜の花、柊木の花、マーガレットなどで活けました。
春の香りに部屋中が包まれました。

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# by natsumeakemi | 2024-03-06 08:08 | 仏花 | Trackback | Comments(0)